文・塚田 聡

『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』
礒山雅著 講談社学術文庫


バッバ魂のエヴァンゲリスト表紙

他の分野でもそうなのでしょうが、音楽書は絶版で消えて行ってしまう良書が多いと思います。そうした本を忘れないため、また古本でも手にとっていただけたらという想いを込めて、〈読み継いでいきたい音楽本〉に寄稿させていただきます。  

これまでどれだけ多くの音楽本から刺激を受けて自分の音楽の世界が広がってきたことでしょう!  
私の最初の寄稿となる今回は、大学時代に最も刺激を受けた音楽書、〈バッハ=魂のエヴェンゲリスト 礒山雅著〉を取り上げます。

壁の向こう側の近寄り難いヨハン・セバスティアン・バッハの音楽。そんな想いを抱いていた未熟な藝大一年生の眼を開かせるきっかけとなったのがこの本です。  
当代随一のバッハ研究者による本なのですが、「はじめに」では、ご自身が「高校時代までバッハにあまり興味がなかった」という告白から始まります。
文体は親しみやすく、バッハの生い立ちが紹介される第1章から、我々はバッハと共に人生を歩み始めるかのようです。  
最初期のカンタータ「神の時こそ、いと良き時」BWV106の楽曲解説中(第2章)に付されたヴィオラ・ダ・ガンバの写真を眺めながらその音楽を聴くとき、その柔らかく甘美な音色と旋律にうっとりとし、早くもこの作曲家の魅力の虜になりつつある自分に気がつくことでしょう。
 
J.S.バッハの世界の扉を開くことは、音楽の扉を開くことでもあります。この本を閉じた時、その後ろには永遠の世界に続く扉が開いているのです!  

〈バッハ=魂のエヴェンゲリスト〉初版は昭和60年4月1日(まさに私の大学入学の日)に東京書籍から出版されました。その後絶版の時期が続きましたが、2010年に講談社学術文庫から文庫版で改訂版が出され、今でも簡単に手に入れることができます。  

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バッハ=魂のエヴァンゲリスト (講談社学術文庫) [文庫]


塚田 聡(つかだ さとし)
古典派音楽をこよなく愛するホルン奏者。フラウト・トラヴェルソを愛奏。
ラ・バンド・サンパ http://kikuko-mdf.com/sympa.html
古典派シンフォニー百花繚乱 http://www.ab.auone-net.jp/~symcla/18/biao_zhi.html
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