文・辻 有里香

『バロック音楽 豊かなる生のドラマ 』 
礒山雅著  NHKブックス 1989年出版

バロック音楽豊かなる生のドラマ表紙

バロックバイオリンを始めた頃に、バロック音楽について色々知りたいと思って読んだ本がこの本だったかと思います。音楽はバッハやヘンデルが一番古いというイメージがどんどんと崩れて、朝起きたらコーヒーを飲みながら、BGMで流す癒やしの音楽がバロック音楽だというイメージも、どんどん崩れていきました。

「バロック音楽は、宮廷や教会の日々の暮らしとともにあった音楽である。したがってそこには、よい意味での日常性がつきまとっている。こうした音楽を演奏するのに、ロマン主義的な発想は概して不向きである。なぜならば、ロマン主義は本来芸術の非日常性を尊び、作曲家を崇拝して作品を神聖化する傾向があるからである。」― 引用p.192

バロック音楽の時代は、病気で亡くなる人も多く、バッハなども小さい頃に両親と死別したり、最初の妻をなくし、子どもも多く失いました。現代よりもっと死と向かい合せで生きていたのではないでしょうか。そのために生をもっと身近に考えたり、意識したりする時代だったのではと思います。そういう日常の生活とともに、音楽があったんだなと考えると、バロック音楽が耳障りのいいだけの音楽に聴こえてこなくなります。

著者の結語が素晴らしいです。ここで書くと読む楽しみがなくなるので、是非ご自分でお読みになってかみしめてください。

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辻 有里香(つじ ゆりか)
東京でユリカミュージック(バイオリン)スクール主催。バイオリン、ビオラ指導者。古楽好きでバロックバイオリンとビオラ・ダ・ガンバを教室に置く。合奏を通して、「人との協調」「音楽」を教えるレッスンを続けている。
ユリカミュージックスクール  http://www.yurikaviolinschool.jp/