文・藤 拓弘

『パリ左岸のピアノ工房』
T.E.カーハート著 村松 潔・翻訳 新潮社 2001年出版

パリ左岸のピアノ工房表紙

パリの裏通りにあるひっそりとしたピアノ工房を舞台としたノンフィクション。アメリカ人の物書きが、子どもの幼稚園の送り迎えのときに見つけたピアノ工房「デフォルジュ・ピアノ店」。ピアノ職人のリュックとの出会いから再燃した、ピアノという楽器への憧れと想い・・・。ピアノ好きな人々のコミュニティともいえる工房で繰り広げられる様々な出来事、そして主人公が振り返る思い出に浸りながら、ピアノの歴史や音楽の世界を旅できる、そんな物語です。

あらためて感じるのは、ピアノという楽器の魅力と、普遍的な美しさ。私もドイツ留学時代に様々な国のピアノを弾きましたが、どれも個性的で、そのピアノだけにしかない歴史が積み重なっていることに、興味が尽きませんでした。

本書に登場する職人を通して、ピアノの再生、そして調律が音を甦らせる一つの「芸術」である、と再認識させられます。多くの人が憧れる「パリ」が舞台というのも、物語に没入させる大きな要因かも知れません。読み終えた頃にはこれまでにもまして、我がピアノを愛で、愛情を持って奏でたくなる、そんな一冊ではないでしょうか。

パリ左岸のピアノ工房

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藤 拓弘(とう たくひろ)
株式会社リーラムジカ代表取締役。東京音楽大学ピアノ科卒業、東京学芸大学大学院修了。ハンブルク音楽院(ドイツ)修了。全国のピアノ指導者に価値ある情報を提供する「ピアノ講師ラボ」主宰。「ピアノ講師のつながるプロジェクト」を展開し、メルマガ「成功するピアノ教室」の読者数は5,000名を超える。「成功するピアノ教室~生徒が集まる7つの法則」(音楽之友社)、「レッスン力を上げる55の言葉」(ヤマハミュージックメディア)など著書多数。ピアノ指導者のための「レッスン手帳」など監修も数多く手がける。
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