文・塚田 聡

『やわらかなバッハ 』
橋本絹代著   春秋社 2009年発行

やわらかなバッハ表紙

「絶対音感」「固定ド読み」「平均律調律」...これら現在『標準の作法』として音楽(教育)界で盲信されていることが、いかに調性音楽から色彩や味わいを奪い取ってしまっているか。分かり易く説得力をもって書かれています。

「等分化」「平均化」。近代化に伴い工業製品のように音楽を分かりやすく標準化・単純化して、誰にでも理解し演奏しやすいようにしてしまったことにより、本来人間の心と同じく読み解きにくく不安定でファンタジーの詰まった音楽から、奥深さ、自由さを奪い取ってしまってはいないだろうか。時代の違いも作曲家の個性の違いも、本当は非常に起伏があり豊かなものなのに、安易な音楽教育により均されてしまっているのではないか。

平均律クラヴィーア曲集全曲を「移動ド」に移調(調号を取り払う)して和声感覚を養うべき、というくだりは衝撃的ではありますが、遠隔調になればなるほど和声への理解が遠のいてしまう自分のような者には、これも有用な試みと共感せざるを得ません。

バッハを通して音楽界の常識にメスを入れる、やわらかくも痛快な書物です。

《平均律クラヴィーア曲集 第1巻》のタイトル・ページに書かれたこの螺旋渦巻き模様には意味があった!?(本書P.29より)
やわらかなバッハ

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・・・管理人より・・・
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塚田 聡(つかだ さとし)
古典派音楽をこよなく愛するホルン奏者。フラウト・トラヴェルソを愛奏。
ラ・バンド・サンパ
古典派シンフォニー百花繚乱
シューベルト研究所
ナチュラルホルンアンサンブル東京