文・塚田 聡

『古楽とは何か 言語としての音楽 』
ニコラウス・アーノンクール著  
樋口隆一・許光俊訳 音楽之友社
1997年発刊

古楽とは何か

1957年にオリジナル楽器を用いたウィーン・コンツェントゥス・ムジクスを結成。それまでのバロック音楽演奏の慣習から切り離された18世紀の響きを探求する演奏に賛否両論の嵐を巻き起こすも、社会の根のない常識に迎合することなく強い意志で邁進し続けたアーノンクール。

彼を古楽演奏の旗手とする向きもありますが、ピリオド楽器を用いればそれでよしとする風潮には批判的でした。当時の歴史的背景、音楽観を、残された文献から不用意な現代的価値観をぬぐい去りつつ読み取り、楽譜にみずみずしい生命力を与え、数々の作品を蘇らせました。

それらはいずれも博物館的価値観的机上の卓論ではなく、芸術的な必然性にもとづく演奏者の価値観に信頼を置く態度が貫かれたもの。アーノンクールが後年ウィーンフィルやアムステルダム・コンセルトヘボウ・オーケストラの指揮者に迎えられたのも、彼の演奏者魂が認められた所以でしょう。

クラシックを演奏する全ての人にアーノンクールが宛てた当書物のメッセージは、どの立場の人にも納得がいくように、言葉が選ばれつつ分かりやすく書かれています。おそらくヨーロッパでは全てのページに演奏する上でのヒントが書かれているこの本を読まずにクラシック演奏をしている人はいないでしょう。アーノンクールの遺言は今でも生き生きと我々に日々語りかけているのです。

クラシックの演奏家にとってバイブル的書物となる「古楽とは何か」。版を切らすことなく重ねていただくよう、出版社にこの場を借りてお願い申し上げます。

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古楽とは何か


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塚田 聡(つかだ さとし)
古典派音楽をこよなく愛するホルン奏者。フラウト・トラヴェルソを愛奏。
ラ・バンド・サンパ
古典派シンフォニー百花繚乱
シューベルト研究所
ナチュラルホルンアンサンブル東京