文・塚田 聡

『おたまじゃくし無用論 ~音楽が好きになる本~ 』
小泉文夫著   いんなあとりっぷ社

おたまじゃくし無用論表紙

この本は、芸大の入学祝いにソルフェージュの先生にいただいた本です。おたまじゃくしの読み方を教わっていた先生からいただいた本が「おたまじゃくし無用論」とは!しかし先生の目論見は大いに当たり、私はほどなく「おたまじゃくし無用論者」になって行きました。

おたまじゃくしの囚われの身になっているオーケストラを小泉先生は「奴隷的音楽」と断じます。「彼らは芸術のよろこびや創造性を代表するよりは、技術者として専門職の官公吏のような存在になるだろう」と。

西洋音楽一辺倒の音楽教育を受ける中で、「おれは音痴だから」、「私は音楽が分からない」と音楽に対して苦手意識をもつ人の割合の多い日本の音楽教育に疑問を投げかけ、情熱をもって音楽の喜びを満遍なく広めようと、高い視点から述べられています。アマチュア精神を尊び、母親の歌うわらべうた、大衆的な歌謡曲に活路を見出そうと論を展開します。

今では、小泉文夫と聞いてピンとこない若者も増えてしまったかと思いますが、先生は日本を含む世界各地の民族音楽を研究、限られた音楽しか聴かれていなかった時代に、ラジオや講演を通じて我々の目を世界の隅々にまで開かせてくれる大きな働きをされました。

そんな先生が「音楽が好きになる本」と副題を掲げて出版した「おたまじゃくし無用論」。もう今の時代には通用しなくなったこともある昭和48年発行の本ですが、音楽離れに歯止めがかかっているとは言えない現代においても読まれる価値のある本です。

おたまじゃくし無用論

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・・・管理人より・・・
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塚田 聡(つかだ さとし)
古典派音楽をこよなく愛するホルン奏者。フラウト・トラヴェルソを愛奏。
メヌエット・デア・フリューゲル
ラ・バンド・サンパ
古典派シンフォニー百花繚乱
ナチュラルホルンアンサンブル東京