文・杉山真衣子

『 新版ドビュッシーとピアノ曲』
マルグリット・ロン著 室淳介訳 音楽之友社

ドビュッシーとピアノ曲表紙

名ピアニスト、ロン夫人による演奏法と解釈。純粋にメカニックな面から、内容の解釈に至るまで詳細に語られている。翻訳に関しては、1969年出版の旧版からの大きな改訳は一切なく、ごく一部の訳文に関してのみ、遺族の了承を得て、現代的な言い回しに変更した。もっとも大きな変更点=利点は、随所に見られる引用譜例を、弊社の安川版および山崎=ムニエ版の掲載ページを併記することによって、参照を容易にしたことである。

私にとって、ドビュッシーは生涯をかけて研究している作曲家の一人である。
しかし、最近、自分の中で勝手に解釈していた部分や、変わり者ではあってもドビュッシー自身がフランス人であったことが解釈から抜け落ちていて、彼の作品をブリリアントに弾き過ぎていたと反省する所が多々あった。そして、今一度この本を読み直した次第。

この本はそんな自分に以前に読んだ時よりも、より強くドビュッシーを感じさせてくれる。 帯にある通り、
『水に映る影』を『水に小さな輪がひとつ。小石がその中に落ちたのだ』
という表現があるが、フランス語にも共通する、空気を含んだような発音、これは彼のピアノ曲の発声法にも当てはまると思う。
非常に柔らかい煌めきなのではないかしら。

作品毎による解説の他、ドビュッシー自身の言葉が散りばめられており、ドビュッシーを愛する人にも、彼の作品を深く理解したい人にも多くのヒントを与えてくれるだろう。

私自身も初心に返って、ドビュッシーを新たに再び弾きたいと、心から願う。

[目次]
天才をむかえて  
 ピアノにむかって1――― 手とその位置/きびしく求められる正確さ/歌、全体の調和を第一に
 ピアノにむかって2――― ピアノにむかうドビュッシー/転調/ニュアンス/ドビュッシーのテクニック  
 ピアノにむかって3――― 響き/ルバートとドビュッシー的詩/「ピアノのために」「映像」(第1集)/わたしの初演奏会「幻想曲」  
 ピアノにむかって4――― ドビュッシーとフランシス・ブランチ、他の名演奏家たち 
牧神の午後  
 人生の意味、作品の意味
 「前奏曲」  
  第1巻(1909-10)  
  第2巻(1913)
 テキスト、「版画」「映像」  
  「版画」(1903年)  
  「映像」(第2集)
 芸術、それは肉づけする科学である
 ドビュッシーにおける恋について 聖セバスティアン
 訳者あとがき 

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【音楽之友社】
※2018年2月27日現在、Amazonでの取り扱いはありませんでしたが絶版ではありません。音楽之友社のこの本のページへリンクしています。
https://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?code=131590


杉山真衣子(Maiko Sugiyama)Pf
桐朋女子高等学校音楽科(共学)を経て、桐朋学園大学音楽学部音楽学科ピアノ専攻を卒業。
全日本学生音楽コンクール高校の部 東京大会第2位はじめ、数多くのコンクールで受賞。
モーツァルトピアノコンチェルトK466、ロシアでラフマニノフ2番のコンチェルトの
ソリストを務める。
B.P.MUSIC STUDIO主宰講師、指導歴22年(2017年)現在に至る。
親子で楽しめる地域活動イベントを行うほか、ソロリサイタルや室内楽の演奏会等の企画・
運営・出演など各方面で活動。公財 日本ピアノ教育連盟、日本ギロック協会会員。
これまでに、故村尾アサ子、古藤幹子、故井上直幸、権藤譲子、ノレッタ・コンチ、
故ケンドル・テイラー、玉井美子、大野眞嗣、大石学の各氏に師事。
B.P.MUSIC STUDIO